スローダウンとは資本主義のアンチテーゼである

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スローダウンとは資本主義のアンチテーゼである

Slowdown 減速する素晴らしき世界」を読了しました。

オックスフォード大学、気鋭の地理学者であるダニー・ドーリング 氏の著書です。解説はあの山口周さんが担当されています。

本書で叫ばれる「スローダウン」とは、世界のスピード感は減速しており、今後は世界全体が更に停滞していくことをあらわした事象のことです。

一般的には、「加速していく世界」はいいもので、「停滞していく世界」はよろしくないという価値観がありますが、本書では「素晴らしき世界」と謳われているように、次にくるスローダウン(停滞した世界)が「悪いものではない」という主張をしています。

本書は多くの統計データから、世界の「スローダウン」を語っています。

世界人口・気温・学生の債務・Wikipediaの記事数・各国のGDP・お金・コーヒーの消費量等といった項目について、実証的なデータを解説しながら、進歩・成長・拡大がスローダウンしていることを示します。

本書は内容は非常に難解ですが、読み応えのある書籍です。

今後の世界全体が、どのように変化していくのか「興味がある!」と言う人は手に取ってもらいたい一冊です。

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目次

経済成長しないで、どうやって人は幸せになればいいのか?

本書では、経済成長をひたすら目指す「資本主義」というシステムの限界を指摘しています。

真に問題なのは「経済成長しない」ということではなく「経済以外の何を成長させれば良いのかわからない」という社会構想力のなさであり、さらに言えば「経済成長しない状態を豊かに生きることができない」という私たちの心の貧しさなのです。

Slowdown 減速する素晴らしき世界

資本主義が多くの富を生み出し、社会を豊かにしてきたのは間違いないですが、「資本主義は永遠に続かない」というのが本書の主張です。

まさに「脱・資本主義」的な発想です。普通なら経済成長しなければ、私たちの生活は貧しくなるのではないかと考えますよね。

日本の立場で考えると、経済成長がなくなれば、国としての魅力もなくなるし、人口が減少して税収が下がる日本においては、なんとかインバウンド需要で景気を刺激して、より魅力的な国として今の立場をキープしたいわけです。

むしろ、今よりもっと経済成長していかなければ、国内のインフラを維持し続けることは難しいでしょう。

経済以外の何を成長させれば良いのか分からない。というのは当然のことではないでしょうか。どこの国も経済成長を追い求めているのですから。

資本主義が生き残るには、需要を拡大し続け、絶えず変化する必要がある。
進歩のために進歩しなければいけない。次の最高の財・サービスを売買し続けるには、新しいものを生み出し続け、それを欲しいという人に売る新しい市場を創造し続けるしかない。
まさにその理由から、資本主義は持続可能ではない。
だとしたら、どうしてそうなってしまうのだろう。

Slowdown 減速する素晴らしき世界

資本主義における豊かな社会をつくる為には、人々がお金を使ってモノやサービスを消費し続ける必要があります。

人の欲求を刺激して、「終わりなき生産消費ゲーム」のサイクルを作り出すことで、世界経済は発展してきました。

本書がこれを負のサイクルだと言うならば、私たちはこれから何を目指して生きていけばいいのでしょうか。

GDPの上昇では、人の幸福度は上がらない

GDPは幸福度を測定しないし、飲料水がどれだけきれいかも反映されない。
スローダウンが進むということは、凶暴な資本主義が終わることを意味する。
市場も需要も際限なく拡大し続けるという期待の上に成り立っていただけでなく、いびつな富の集中を生み出して、民主主義を踏みにじっている。
そんなものが永遠に続くわけがない。

Slowdown 減速する素晴らしき世界

よくメディアでは「GDP上がりました!」「GDP下がりました…」と、国内総生産を軸に「国としての成長度は今こんな感じですよ」と報道されることが多いです。

「へぇGDP上がったんだ」というニュースを見た時の違和感は、「でも、対して何も変わってなくない?」「むしろ僕たちの可処分所得って減ってない?」ということ。

経済成長を追い求めてGDPが上がったからといって、自分たちの暮らしにプラスが実感できることは少ないし、むしろGDPが上がったことで、より富裕層への「過剰な富の集中」を生み出して、格差がさらに拡大しているのではないか?という懸念もありますよね。

>>「Slowdown 減速する素晴らしき世界」をチェックする

スローダウンしていくと経済格差はなくなるのか?

本書で叫ばれる「スローダウン」が進むと、本当に経済格差はなくなっていくのでしょうか?

スローダウンが始まると、大きな経済格差は持続しなくなるだろう。

物事が変化しなくなれば、収縮し高齢化する人口から利益を挙げるのははるかに難しくなる。

人々はいまよりも賢くなって、「新しさ」だけではだませなくなるし、黄金も真珠もいらなくなる。

大半の広告の狙いは、私たちが必要としていないものを欲しがるように説き伏せることだ。

これは買わなければと思わせるか、最低でも、どうしても欲しい、何としても手に入れたいという気にさせる。

しかし、いまでは心理学や社会科学を勉強している人や、数的スキルが高い人も増えているので、大多数の人をだますのは至難の業になるだろう。

Slowdown 減速する素晴らしき世界

このまま日本の人口減少が進むと、お金を使う人の全体数が減るので、そうなると国の税収は大幅に下がるのは間違いないですよね。

スローダウンすることによって、「大きな経済格差はなくなる」という話でしたが、スローダウンによって、これまでの「富の集中」がどのようにして解消されていくのかが、あまりイメージできませんでした。

「みんなが平等にあるべき」という考え方を否定するわけではないですが、社会的にある程度の経済格差は必要だと思います。

富裕層が多額の税金を納めたり、一般人の手には届かない高価なモノやサービスにお金を使ってくれるからこそ、社会にお金が循環しているのではないでしょうか。

本書では「資本主義の終わり」はもう始まっていると述べられているものの、「何のためにスローダウンするのかも、まだわかっていない」とも書かれていました。

ただ一つ分かっていることは、このスローダウンが「人類が幸せになれる未来を迎えるために必要なものであるのはほぼ間違いない」ということです。

スローダウンすることで人類は安定へと向かっている

スローダウンは歴史の終わりでも、救いの到来でもない。
ユートピアに向かっているわけではないが、ほとんどの人の生活はよくなるだろう。
住まいも教育も改善し、過酷な仕事も減る。私たちは安定へと向かっている。

Slowdown 減速する素晴らしき世界

スローダウンを読み込んでいくと、世界はあえて停滞していくことで人類は「本当の意味での安定」を手に入れるだろうとの結論に至ります。

経済成長だけをひたすらに目指す社会的風潮は、確かに人々の心を激しく疲弊させてきました。

経済的に豊かにはなったものの、失ったものも多く、今や世界一の病は「うつ病」です。

いつも気が張り詰めていて、癒やしを求めなければいけないような日々が終わるときがきっとやってくる。
感覚としては、私たちの暮らしは、つい最近の20世紀の先人たちの生活より、狩猟採集民の祖先たちの生活に近くなる可能性さえある。
この先に何が起こるかは誰にもわからないが、よりよい未来をつくるには、まずそれを思い描かなければいけない。

Slowdown 減速する素晴らしき世界

このスローダウンが、果たして人類を幸せにしていくことなのか、今ではまだ分かりませんが、ただ一つ言えることは、人類も含めてあらゆるモノが、いよいよ限界点に到達しつつあるということ。

加速と拡大をし続けてきた世界の中で、私たちが安定した世界を取り戻すには、本書にある通り「経済のスローダウン」を少しつづ進めていきながら、人と人がより協力し合える社会を作っていくことではないのでしょうか。

今後の世界全体が、どのように変化していくのか「興味がある!」と言う人は、手に取ってもらいたい一冊です。

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