「起業の天才!江副浩正|8兆円企業リクルートをつくった男」をAmazonで購入して読みましたので書評したいと思います。
僕はリクルートが作り上げたといっても過言ではない人材業界で働き、10年以上に渡り「人材ビジネス」に携わってきました。
そんなリクルートの源流を学びたいと思い本書を読み込みました。その中で感じたことなどを、まとめていきますので最後までお付き合いください。
【内容】起業の天才!江副浩正|8兆円企業リクルートをつくった男
本書の主な内容は以下の通りです。
【第一部】 1960
ユニコーンの誕生
紙のGoogle
進撃のダイバーシティ
日本型経営を叩き潰せ
APPI打倒Y
【第二部】 1984
江副か稲盛か
森田の未来、真藤の未来、江副の未来
情報の海へ ALL HANDS ON DECK!(総員配置につけ!)
【第三部】 1989 昭和の終焉・平成の夜明け
変容
情報が人間を熱くする
世紀のスクープ
反転
おまえら。もっといかがわしくなれ!
リクルートの誕生秘話から、リクルートはどのように発展を遂げ、日本の大手企業と肩を並べる存在になれたのか。
創業者である江副浩正氏の生い立ち、ビジネス面の豪快な手腕、そして会社が大きくなっていく中で、どこで経営判断を間違えてしまったのか、そんなリアルな歴史が細かく記載されています。
リクルート事件から30年。リクルート不在の平成30年間のおかげで、日本経済は世界の成長から完全に取り残されたのだと語られているのが印象的です。
【重要ポイント】起業の天才!江副浩正|8兆円企業リクルートをつくった男
大手企業を逆手に取ったリクルートの採用戦略
大手企業の採用戦略は、今では「高卒採用」「女性採用」「多国籍人材の採用」が一般的にはなってきましたが、1960年代は「学歴主義」「男女差別」が蔓延っていたので、「男性の採用」「大卒以上の採用」が優遇されている時代でした。
そんな中、リクルート(日本リクルートメントセンター)は大手企業とは逆を行く「採用戦略」を大胆に実行していたのです。
江副は大卒に負けるもんかという反骨心を持った地方出身の高卒者や、男子より遥かに優秀な成績を収めながら就活で差別されて悔し涙を流した女子学生、祖父母の代から差別されまともには就職できないと諦めていた、在日コリアン(在日韓国・朝鮮人)の若者に機会を与えた。
引用元:起業の天才!江副浩正|8兆円企業リクルートをつくった男
リクルートは、大卒がもてはやされていた組織内に、あえて「劣等感と反骨精神のある高卒者」を送りこみ、組織内に化学反応を起こしました。そして、女性というだけで就活で差別されてきた女子学生を積極的に採用し、男性と同等の仕事を任せていたのです。
まさに「人事の天才」と言われた江副浩正氏だからこそ、実現できた採用戦略だと思います。
「個の経営という圧倒的な当事者意識」が生み出すシナジー
リクルート江副浩正氏の言葉に「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変えよ」という名言があります。
この言葉にあるように、江副浩正氏は常に社員にこのように問いかけていたそうです。
「君はどうしたい?」
江副浩正氏は、このように語りかけ、所属している社員の意思を尊重し、本人が「抱えている不満」を「前に進むエネルギー」に変えていくのです。これこそが江副浩正氏の「個の経営」という魔法であると思います。
頑張って仕事をすれば、周りに賞賛され、いいアイデアを出せば「それいいね、じゃあ君がやって」と責任者に抜擢される。他の会社では味わえない充実感を彼女達は味わっていた。
引用元:起業の天才!江副浩正|8兆円企業リクルートをつくった男
リクルートの大きな危機と言われる、読売新聞社が「住宅情報誌」に参入した時に、圧倒的に知名度があり、有利だった読売新聞になぜリクルートは勝てたのか?
臨戦状態にある日本リクルートセンターで会社の悪口を言っている暇人など、1人もいない、どうやって物件を集めるか、納期を短縮するか、販売ポイントを増やすか。寄ると触ると、社員の口をつくのは住宅情報を良くするためのアイデアだ。
引用元:起業の天才!江副浩正|8兆円企業リクルートをつくった男
大手の社員は現場で愚痴を吐くけど、リクルートの社員は愚痴を吐くくらいなら、とにかく目の前にあることをやり抜き、勝つための手段を常に考えていたのです。
大手競合他社が社員の意思を尊重しない「やらされ仕事」をさせている間に、リクルートは「個の経営という圧倒的な当事者意識」で、勝てるはずがないと言われていた大手をブチ破っていったのです。
この「個の経営」こそがリクルートの最大の強みでないかと思います。
リクルート事件がなかったらリクルートはどうなっていたのか?
本書では、あのリクルート事件をこのように解説してます。
リクルート事件が、戦後最大の疑獄になったことで、江副が成し遂げたイノベーション、つまり知識産業社会リクルートによる既存の産業構造への創造的破壊は江副浩正の名前とともに日本経済の歴史から抹消された。
引用元:起業の天才!江副浩正|8兆円企業リクルートをつくった男
本書を読んで、始めて知りましたが、江副さんが約30年くらい前に思い描いていたビジネス構想は、今となってはAmazonのジェフベゾスがAWSというサービスで実現していますし、Googleのように、ユーザーと情報をマッチングするビジネスの先駆者は、日本では紛れもなくリクルートの江副浩正氏がリードしていました。
日本のメディアがいや、われわれ日本人が、大罪人のレッテルを張った江副浩正こそ、まだインターネットというインフラがない30年以上も前に、AmazonのベゾスやGoogleの創業者であるラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリンと同じことをやろうとした大天才だった、その江副を彼の負の側面ごと全否定したがために日本経済は失われた30年の泥沼にはまりこんでしまったのである。
引用元:起業の天才!江副浩正|8兆円企業リクルートをつくった男
これまで江副さんやリクルートが成し遂げてきたイノベーションは、その後も日本国内にとどまらず海外にも発展していったはずですが、「リクルート事件」という世論の加熱によって巻き起こった社会問題に、沈められてしまったという思いは否めません。
リクルート事件の発端は、江副さんが「リクルートコスモス」が上場する前の株式を、政治家や仲の良かった経営者に渡していたことが問題になった訳ですが、本書の中ではこんなエピソードもあります。
企業がはじめて店頭や東証二部などに上場するときに、つきあいのある人、知人、社会的に信用のある人々に公開前の株を持ってもらうのは当たり前のことであり、どの企業もがやっている証券業界の常識ですよ。
引用元:起業の天才!江副浩正|8兆円企業リクルートをつくった男
それ以外にも、実際に政治家に現金を渡している映像が出回ってしまったりと問題もあったのですが、世論が加熱したことによって、「リクルートは危ない会社だ!」というイメージが世間に出回り、そしてリクルートを快く思っていなかった新聞社から叩かれ、リクルートは江副浩正は窮地に追いやられてしまったのです。
もしこの時、江副浩正氏が引き下がらずに、リクルートを引き続き牽引していたのならば、世界の時価総額ランキングには「リクルート」の名前が残っていたのではないかと思います。
>>会社から指示された事だけやってるサラリーマンの価値はない
起業の天才!の良かった点と悪かった点
良かった点
- ビジネスの視点が学べる
- 営業会社だけに営業マインドが学べる
- 江副浩正というカリスマの思考が学べる
- リクルートという最強企業の仕組みが学べる
今の若きビジネスパーソンが、ビジネスを歴史を学ぶのには丁度良いと思います。また江副浩正というカリスマ経営者の思考やビジネスの未来を見通す目利き力など、勉強になることがたくさんあります。
悪かった点
- 2,000円超えなのでビジネス本としては高め
- 470ページに及ぶ大作なので読むのに時間がかかる
内容は申し分ないくらい面白いので、あえて言うのならば、読み応えがありすぎるので時間がかかるのとコストくらいでしょうかね。
起業の天才!がおすすめな人
『起業の天才!江副浩正|8兆円企業リクルートをつくった男』はこんな人に読んで欲しいです。
- 生きる意味を失っている人
- 仕事でワクワクを感じたい人
- 仕事にやりがいを感じてない人
- 人材業界で働いているビジネスパーソン
個人的には、特に「若きビジネスパーソン」に読んで欲しいです。その理由は、リクルートの社風って、どこまでいっても熱量が高いし、ガムシャラな働き方なんですよね。
「働き方改革」の後押しもあって、ここ最近は、「ソフトな働き方」が主流だなぁと思っていて、どこか「あまり無理しないようにしよう」とか、「残業してまで働くのって格好悪いよね」みたいな風潮があるじゃないですか。
確かに無駄に働くのは良くないですし、残業だらけでプライベートの時間が取れないのは良くないですけど、「現場で汗をかく」という感覚は忘れないで欲しいなぁと思います。
『なんか、今の俺って、頑張りが足りないなぁ』って思ったら、手にとって欲しい一冊です。
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